トーキング・キュア-ライフステージの精神分析
臨床知見から発して人類史的考察に至る精神分析の息長い射程が鮮やかに表現された,精神分析的人間学の成果。
日常会話から身体所作そして芸術表現に至るまで,超言語的な象徴的意味における「語ること」は,有史以来,苦しみを解消して喜びを共有するための人間の条件として措定され,精神分析の祖ジークムント・フロイトとともに治療技法としての自由連想法においてその極点へと到達する。そして精神分析はまた,フロイトの性発達理論,メラニー・クラインの妄想分裂ポジション/抑うつポジション理論を通じて,ライフステージに立脚したこころの発達プロセスを分析対象としてきた歴史を有する。
英国タビストック・クリニックのメンバーによって構成された英国BBC放送プログラム「精神分析の現代社会への寄与」をプロトタイプに,本書はトーキング・キュア(Talking cure)としての精神分析を多元的に展開し,ミクロとマクロの両面からライフステージとこころの発達の関係性を探索する。「こころのめばえ」「遊び(プレイ)」「こどもと純心さ」「成長のプロセス」「こころの成り立ち」「愛」「夢を見ること」「家族」「集団」「仕事」「こころにとっての食べ物」「正常と精神疾患へのこころの態度」「精神的苦痛と精神疾患」「心理療法」「時を刻むこと」「年を重ねること」「未来」――ライフステージの精神分析の名の下に考察される主題系は,精神分析臨床記録を苗床に,語ることに支えられた日常生活,そして人類史そのものへとアプローチしていく。